研究紹介

当研究室では、森林生態学や樹木生理生態学に関連する研究を行っています。森林を構成する多様な樹木の個性を調べ、森林の再生や修復に活かすとともに、森林に生息する様々な生物と樹木との関係性を探る研究に取り組んでいます。以下に、最近の主な研究トピックを紹介します。

1 樹木の種子生産の豊凶(マスティング)のメカニズムの解明

温帯のブナや亜寒帯のモミやマツ、熱帯のフタバガキなど、世界の森林生態系の優占種の多くが種子生産に年変動を持つため、他の生物や物質循環に大きな影響を及ぼしています。マスティングと呼ばれるこの現象は、これまで多くの研究者を魅了し様々な研究が行われてきました。しかし、まだメカニズムの全容解明には至っていません。私たちは、炭水化物や窒素、リンといった開花や種子生産に必要な資源の蓄積とマスティングの関係性に注目し、そのメカニズムに迫る研究に取り組んでいます。

2 気候変動に対する樹木の生理生態的応答

地球規模の気候変動の影響は、既に様々な生物や生態系に影響を及ぼし、今後その影響がさらに拡大することが予想されます。固着性で長寿命の樹木は、過去の気候変動に対してどう対応し、また今後予想される高温・乾燥化といった環境変化に対してどのような応答を取るのでしょうか。私たちは、樹木の高温・乾燥耐性やそのメカニズムを、野外調査と同位体分析、操作実験などを組み合わせ、総合的な視点から解明する研究を進めています。

3 持続的な森林管理や希少種の保全に関する研究

日本では高度成長時代を境に里山を利用する機会が激減し、管理されずに長期間放置された森林では、近年ナラ枯れ被害の拡大や希少種の衰退・絶滅など様々な問題が発生しています。一方、東南アジアの熱帯地域では、開発によって原生林が激減し、現存する森林の大部分が二次林に変化しています。これらの森林の環境や、主要な構成種・希少種の生態特性を調べ、持続的な森林管理に必要な対策を検討する研究に取り組んでいます。

4 樹木と動物の生物間相互作用に関する研究

森林は生物多様性の宝庫であり、樹木を含めた様々な生物が相互に関係しながら生態系を構成しています。生物多様性保全を考慮しながら自然環境を管理していくためには、その基礎情報として生態系を構成する様々な生物間の相互作用を明らかにしていく必要があります。私たちは、樹木の被食防衛戦略など葉をめぐる動植物間の攻防に注目するとともに、造林地を含めた様々な植生の面積や周辺環境が動物の分布や生態に及ぼす影響を評価する研究を進めています。